「で……これからどうしよう?」

「どう考えても森の中よりはこっちの方が安全そうな気がしないか?」

フレイザーがあごで指し示したのは、何もない荒地…



「だよね。
歩いてるうちにはきっと町に出る筈だ。」

「じゃあ…」

フレイザーが話しかけた時、彼の腹の虫が鳴いた。



「……こんな状況でもおなかは減るんだね。
僕もおなか減ったよ。」

「エリオット、おまえ、何か食べるもの持ってないのか?」

エリオットは俯き加減に首を振った。



「……仕方ない。
我慢して、歩いて行こう。」

「どこまで我慢するんだい?」

「どこって……食べ物にありつくまでだろ…」

フレイザーのその言葉に、エリオットはさらにうなだれた。







「何もないねぇ…」

消え入りそうなエリオットの声に、フレイザーは足もとの小石を蹴った。

荒野でも小型のモンスターを見かけることはあったが、ほとんどのものは何もせず通り過ぎて行った。



「くっそー!なんで、町がないんだ?
もう、ずいぶん歩いてるのに…」

あたりはすっかり暗くなっていたが、幸い、フレイザーが懐中電灯を持っていたため困る事はなかった。
そうでなくとも、月灯かりだけでも相当明るい。



「ねぇ…フレイザー…うっ!」

「動くな!!」

「だ、誰っ?!」

エリオットは後ろから腕を回され、その首筋には短刀の冷たい感触が走った。



「お、おまえ!」

懐中電灯の灯かりに照らし出されたエリオットの状況に、フレイザーは息を飲んだ。
エリオットに短刀を押し当てている人物は、自分達と同じ年頃の少年だ。
しかし、その鋭い視線、身のこなしは自分達とは明らかに違う。



「その灯かりをこっちに向けるな!」

「あ…あぁ…」

フレイザーは、懐中電灯を下に向けた。



「金と食べ物を出せ!
素直に従えば、危害は加えない!」

「そう言われてもなぁ…」

「こいつがどうなっても良いのか?!」

「そうじゃないんだ。
俺達、金も食べ物も全く持ってないんだ。
嘘だと思うなら、調べてくれても良いぜ。」

「なんだって…?!」

フレイザーにそう言われ、少年は二人の姿をまじまじとみつめる。
エリオットは杖、フレイザーは灯かりを出すものしか持っていないことから、少年はフレイザーの言ってることが嘘ではないと理解した。