「どうしよう…僕のせいだ…
僕のせいで、町がこんなことに…」

エリオットはへなへなのその場に膝を着いた。



「エリオット…心配するな。」

フレイザーはエリオットの肩にそっと手を置く。



「ここに町がなくなっても、俺達の家がなくなったわけじゃない。
俺達がおかしな世界に来ちまっただけなんだ。
皆は無事だから…」

「……そうか…そうだね。
皆は無事なんだね…良かった…」

「でも……皆は俺達のこと、心配してるだろうな…」

「……そうだね…」

二人の間に、長い沈黙が流れる…
森の奥からは、モンスターのものと思われる雄叫びが響き渡る。



「エリオット、俺に最後の宝石を使わせてくれ!」

「何をするつもりなんだい?」

エリオットは不安げな視線を、フレイザーに投げかけた。
フレイザーは、その問いには答えることなく、紫色の宝石を手に取った。



「フレイザー!」

「俺達が元の世界に戻れるまで、俺達を知ってる人が、皆、俺達のことをすっかり忘れてしまうようにしてくれ!」

フレイザーの手の平で、紫の宝石は粉々に崩れた。



「あぁ……」

エリオットの口から、落胆とも安堵とも取れる声が漏れた。



「ごめん…でも、俺、家族には心配かけたくないんだ…」

「……そうだね。わかるよ。
僕達、もう元の世界にはきっと帰れないだろうし…
それなら、いっそ忘れてもらった方が良いもんね…」

エリオットの瞳にはいっぱいの涙が溜まっていた。



「馬鹿野郎!俺は必ず帰るぞ!
考えてもみろよ、俺は大人だし、おまえは魔法が使えるんだぞ!
なんとかなるって!」

「そりゃあ、生き延びることは出来るだろうけど、元の世界には…」

「そうなのか?
ゲームにはよく願いが叶うアイテムみたいなものが出て来るんじゃないのか?」

「あ……」

エリオットが何かを思い出したように、頷いた。



「だろ!?だからきっとこの世界にもそういうもんがあるさ!
俺達はきっと元の世界に帰れる!
絶対に帰るんだ!」

「うん!そうだね!」

二人はお互いに少し無理した微笑みを浮かべ、固い握手を交わした。