紅葉ちゃんは優しくて頼りになる学級委員長で、夕人と同じであたしの保護者みたいになっている。

どうしてこんな保護者みたいな人ばっかりが集まるかは分からないが、おかげで周りからは家族みたいだとよく言われている。

どうやらあたしは、壺井夫婦の次女らしい。

長女が葵だ。

そういう事もあり、夕人とあたしがあくまで友達というのは周知の事実だし、毎朝登校するのも『あたしが遅刻しないために夕人が引っ張りだしてきてる』と思われている。

残念ながら否定できない。

「そういえば、今日来るという転校生君ってどんな感じの子かな?」

あたしはバスに乗ると同時に夕人に聞いた。

「見てみないと分からないけど、莉花が他人に興味を持つなんて珍しいね。」

人込みの中に入り、夕人の声が小さくなる。

「いや、昨日に葵と話してたんだけど、描き甲斐のあるイケメンだと嬉しいねって言ってて。」

「それは葵ちゃんが言ってたんじゃなくて、莉花が一方的に言ったんだろ。」

「イケメンがいいって事は葵も言ってたよ。描き甲斐についてはあたしだけど。」

すし詰めのバスに揺られること15分、あたし達はバスを降りて、これまた人の多い電車に乗り込む。

10分程して学校の最寄り駅につくと、同じ制服を着た人で駅のホームは溢れかえっていた。

その中を、速足で歩く夕人に着いていくと、改札の端に立つ綺麗な女の子に手を振った。

「紅葉ちゃーん!」

「なんで莉花が僕より先に紅葉の名を呼ぶんだ。」

夕人のツッコミなんて無視して、あたしは紅葉ちゃんに抱き付く。