6月になって、夏服に代わったセーラー服に袖を通して、毎朝思う事がある。

これを着るのも今年で終わりだということだ。

ブレザーに憧れる女子生徒が大半だが、あたしは意外とこの夏服が好きだった。

紺のプリーツスカートと真っ白のトップスに、スカートと同じ色のスカーフ、なかなか可愛い。

少なくとも、夏服を着た女の子を描くのはとても楽しかった。

美術室にいると制服が汚れてしまう事もあり、その度にお母さんに怒られるのは嫌だけど。

でもこの平日の朝に感慨にふけるわけにもいかない。

いつも一緒に登校している幼馴染が既に家を出たのを窓から見てしまったためだ。

あたしは急いで着替えると、「いってきます!」と大きな声で叫んで、鞄と共に家から飛び出す。

そして当たり前となった日常に反省しないで、今日もあたしは笑顔で挨拶した。

「おはよう、夕人。」

「おはよう。今日も慌ただしかった?」

「まあね。ねえ夕人、もうちょっと遅くに家出ても間に合わない?」

「間に合うけど、莉花に合わせていたら毎日遅刻になる。それに紅葉がこの時間だから、僕は時間を変えるつもりはないよ。」

「ですよねー。」

話しながら一緒に歩いているのは、幼馴染の壺井夕人(つぼい ゆうと)だ。

家が隣同士の美少年である。

これだけ聞くと、少女漫画のような恋愛が生じそうに聞こえるが、あたし達の間にそんな甘ったるい感情は全く存在していない。

あたしは夕人を友達兼保護者としか見ていないし、夕人には加賀紅葉(かが もみじ)ちゃんという美人の彼女がいる。