絵を描き始めたら、莉花は少しだけ人が変わる…喋りながら気軽に描いているように見てるのに、手の動きは別人のように速い。
今だってまだ会話を続けている。
「話変わるけど、今日は雨だけど、梅雨は来週からなんだって。
お天気お姉さんが言ってた。」
「今年は沢山降るかな。」
「さあ…去年は空梅雨だったし、どうだろうね。
雨で体育が中止になるなら雨乞いするけど。」
莉花らしいなと思いながら、クスッと笑う。
体育嫌いなのは昔と変わらない。
「笑ってるけど、これはあたしにとってとてつもなく大事な問題なんだからね!
雨って水蒸気が重くなって、重さに耐えきれなくなって地上に降るんでしょ?
どんどん重くなってほしいよね。
体育の時に爆発してほしいよね。」
「莉花、体育嫌いすぎ。でもさ、重さに耐えきれなくて、落ちてくるのか…なんか嫌な表現だね。均衡が崩れる的な。」
「太りすぎて、手持ちの服が着れなくなったみたいな事?」
「その言い方もっと嫌!!」
莉花が鉛筆を置いて笑い出した。
よっぽど私の言い方がおかしかったのか、何にそこまで笑ったかは分からない。
でも、嫌なものは嫌だし、最後の言い方が一番リアルで嫌だ。
気を付けないと思いながら、私は自身の運動不足を嘆く。
「心配しなくても、葵はもっと太った方がいいぐらいだよ。」
鉛筆を持ち直した莉花は、そう言って外を一度見た。