そう言うと、夕人は笑いを堪えきれなかったようだ。

思いっきり笑ってから、こう答えた。

「生きてる!
それは心配しなくていいよ。
大丈夫、古典になったら起きるから。
っていっても、僕が起こすんだけど。」

それから夕人がその子のことを教えてくれた。

「その子は末方莉花。
僕の幼馴染で、絵を描く事と、寝る事と、食べる事しか考えてないけど、良い子だよ。
まあ色々と変だけど。」

「…末方さん。」

今日は周りがこんなにもガヤガヤしているのに起きないなんて、よっぽど疲れているのだろうか。

絵を描いてて寝てないのか、勉強していたのか、はたまたスマホで夜更かししたのか…逆に起こすのが申し訳なく思える程ぐっすりだ。

そんな事を考えてると、誰かがこんな報告を始めた。

「みんなー!古典の先生お休みだって!
だから自習決定!」

歓喜の声が教室中に響き渡る。

それでも彼女は夢の世界から戻ってこない。

これはきっと…そう考えた時、夕人が俺と同じ事を言った。

「訂正、莉花に会えるのは3時間目だ。
自習なのに起こしたら殺される。
でも3時間目は体育だから…実質4時間目か。」

俺と末方さんは巡り合わせが悪いのだろうか。

こんなにも近くにいるのに、話せる機会…というより、話せる隙が全くなくて、俺は彼女のことが気になって仕方なかった。