病室から見える景色は灰色だった。

灰色の中を色とりどりの傘が行ったり来たりする。

私…藤崎葵(ふじさき あおい)はその中で、いつもの傘を探していた。

赤い水玉の描かれたビニール傘、黒くて大きなしっかりしていそうな傘、黄色の折り畳み傘に、ピンクと白のボーダーの傘…どれも違う。

まだかな、と落胆しかけた時であった。

あたしの背中がぴしっと伸びる。

今日も来てくれた、水色の傘、角度によって見える紺色のスカートが見える。

莉花だ。

私はカーテンを開けっぱなしにして、サイドテーブルの上にあるノートを片付ける。

代わりに、今朝に母が持ってきてくれたクッキーの箱を置けば、準備完了だ。

それから数分経つと、病室のドアが開かれた。

「葵!体の調子どう?」

病院内を走ってきたのか、息切れした親友が少し疲れた様子で入ってきた。

「もうかなり元気だよ。
いつもありがとう。」

「どういたしまして。
元気なら良かったよ。
来週退院だよね。
すぐに学校来れそう?」

「多分、退院して3日ぐらいしたら復帰かな。
退院して翌日は流石に無理。」

「そっか…そうだよね。」