「どう、外はまだ暑い?」僕は言った。

「外出は愚行」藤原君は短く答えた。

「そうか」と僕は苦笑する。「そういえば、藤原君って学生?」

「高校生」

「そうか。いいなあ、高校生。若いねえ」

「竹倉君は何歳なの?」

「そうだなあ、何歳に見える?」

めんどくさ、と呟く藤原君へ、二十二だよと苦笑を返す。

「藤原君は?」

「十六」

「若いなあ、羨ましい」

「おれや雅美のそばで言うか?」義雄は蕎麦を茹でながら笑った。

「おっと、初老の前でする会話じゃなかったね」

「初老って言うな。まだまだこれからだよ」

僕は「へえ」といいかげんに返した。

藤原君は小さく笑った。「竹倉君達は楽しそうだね」

「でしょう? それだけが僕の取り柄なんだ」

「十六の若さをあげるから、ぜひその取り柄を頂戴したい」

「このまま十六になってこの取り柄がなくなるの?」それは困るなあと苦笑すると、それがおれだよと藤原君は複雑に笑った。