「ちょっ……稚尋!」
抵抗出来る訳がない。
澪は稚尋に手を引かれるままだった。
「えりに許可とんないでよ。……サボり」
そう言いながら、瑛梨奈は澪に向かってであろう笑顔で手を振った。
瑛梨奈も結局は応援することになったらしい。
『だって俺、まだこいつに何もしてないんだぜ?』
そんな稚尋の言葉を思い出し、澪は一人真っ赤になる。
本当、何なのよ……馬鹿。
顔を真っ赤にしながらも、澪は稚尋の後についていった。
向かった先は保健室。
中には冬歌がいた。
「何よ、あんたたち」
澪と稚尋の顔を見るなり、冬歌は露骨に嫌な顔をした。
隣では、はぁっ…と、稚尋のため息が聞こえた。
「冬歌ぁ……邪魔なんだけど」
「はぁ?お姉様に向かって何、その口の聞き方は!?」
稚尋の言葉に冬歌がキレた。
「お姉様って。離婚した奴をそうは呼びたくねぇんだけど」
離婚……?
稚尋の言葉に澪は妙に納得してしまった。
だから義姉弟でも苗字が違うのか。
なんだか意外だった。
冬歌が結婚してたなんて、澪は考えもしなかった。
「って、澪は知らねぇんだっけ?」
「知ってるよ」
「は?」
澪の答えに、稚尋は瞳を見開いて驚いていた。