「……相変わらず、だな」
その表情は、切ないような淋しそうな、そんな風に見えた。
この二人は、一体どういう関係なのだろうか。
そこに澪の入る隙はない。
瑛梨奈は笑顔で稚尋の手を払い、言った。
「触らないでよ?えりが稚尋のことを嫌いなのは、稚尋が一番よくわかってるでしょう?」
目が、笑っていない。
瑛梨奈、怒ってる?
「知ってる、そんなの。」
そう言いながら、稚尋は澪にもたれかけている腕に力を入れた。
「えりに構ってないで、澪の相手をしてあげなよ?言っとくけど、泣かせたら容赦しないから」
相変わらず笑顔の瑛梨奈。
こんな相手に敵意剥き出しの暎梨奈を見たのは初めてだった。
瑛梨奈の問い掛けに、稚尋はため息をついた。
「無理っしょ?こいつ、すぐ泣くし」
泣かせてるのは稚尋でしょうが!!!
「あんたが優しくしないからじゃん」
瑛梨奈は吐き捨てるように言った。
瑛梨奈の言う通りだ。
「してるさ……だって俺、まだこいつに何にもしてないんだぜ?」
そう言いながら、稚尋は澪を指さした。
恥ずかしさで真っ赤になる澪を見て、今度は瑛梨奈がため息をつき、吐き捨てるように言った。
「下品なんだよ、稚尋は」
瑛梨奈はそう言って、稚尋を睨んだ。
瑛梨奈も、そんな瞳をするんだ。
澪はただ驚いていた。
「男ですから♪しかたねぇだろ?」
「意味わかんないから」
「あっそ。仕方ねぇ。澪借りるぞ」
そう言って、稚尋は澪の腕を引っ張った。