* * *
「あのね……」
「うん」
澪は恐る恐る稚尋の顔を見た。
稚尋も、澪が見ていることには気付いているだろう。
しかし、稚尋は一度も澪と目を合わせようとはしなかった。
いつもの雰囲気とは、だいぶ違っていた。
「私……今いじめが酷くて」
澪は俯きながらボソリと口を開いた。
「……クラスの奴らからか?」
突然の話題に、稚尋は目を見開く。
しかし、口調は優しいままだった。
「うん。サイトでも、見るのは私の悪口ばっかり……もう、疲れちゃってさ」
ハハハ、と力無く笑って見せる澪。
多分その顔は、すごく酷いものだろう。
言われなくても、自分でわかる。
そんな澪の頭の上に、ポンッと稚尋は自分の手を置いた。
大きな手のひらが、安心感を澪に伝わる。
稚尋は、切ない表情で笑いながら言った。
「……俺に、出会わなかったらよかったのに……とか、思ってる?姫」
「!……違っ!!……」
稚尋の言葉に、涙が、頬を伝った。
別に、何も違ってはいない。
先ほどまで、そう自分でも思っていたのに。