それは、変わることのない事実。
勝手に名前を呼んでおきながら、勝手に赤くなっている澪に、冬歌はため息をついた。
今、絶対に馬鹿にされた気がする。
しょうがないじゃないか、一度呼んでみたかったんだから。
澪は心の中で言い訳をしながら深呼吸をする。
「お姉さん。なんてやめなよ、いっつもみたいに冬ちゃんでいい」
「でも……」
「あ゛ー!!でもが多い!!!少しはあたしの言うことを聞きなさいっ!!!」
ついに冬歌がキレた。
冬歌は一度怒らせるとなかなか怒りがおさまらない。
「わかった!わかったから!そんな怒んないでよね!!」
澪が必死になだめた後、冬歌は何事もなかったかのように笑っていた。
「あ、怒ってないわよ!」
冬歌の満面の笑みがまぶしい。
どうやらまんまと騙されたらしい。
澪は大きなため息をつく。
一瞬本気で心配した自分がバカみたいだ。
それでも、冬歌が稚尋の義姉、保健室の冬歌先生には代わりない。
「じゃあね、冬ちゃん……今日はありがと」
澪がそう言うと、冬歌は首を縦に振った。
「……稚尋の本音が聞きたくなったら、また来なさい」
冬歌はそう言って、今度は優しく微笑んだ。
「……うん」
そう告げて、澪は保健室を後にした。
澪は走る。
まだ、自分を待ってくれているかもしれない……という期待を抱きながら、稚尋の元へと。
★きっかけは突然に…
【END】