「ゴホッ……ゲホッ」
稚尋が帰ってしまった瞬間、また一人になってしまった澪。
「……稚尋……来て」
私が稚尋を好きだったら、そんなことを願うのだろうか。
そんなことを考えながら、澪はそっとドアに呟いてみた。
すると、再び扉が開いた。
「……!?…%#&*@ !」
フェイントだ。ずるい。
「なんで!帰ったんじゃないの!?」
まさか今の、全部聞かれてた?
「いや、別に……ただ、気が変わっただけ」
そう言いながら、稚尋は自然に目をそらす。
絶対嘘だ。
「はぁ……?」
稚尋はそう言うと、何の言葉もなしに澪の隣に腰を下ろした。
「……?」
稚尋は優しく、澪の手を握る。
そして澪に言った。
「姫は素直じゃないから……姫が寝るまでいてあげる」
「……っ!?」
この人は本当に私と同い年なのだろうか。
そんな馬鹿らしいことを本気で少し疑ってしまった。
「熱、下がらないよ?」
「なっ……!」
「今日は。俺に従った方が正しいと思うけどなぁ?」
「……っ」
稚尋に真っすぐに見つめられた澪は、それ以上何も言えなくなってしまった。
ゆっくり腕の力を抜く。
今日は仕方がないか。
だけど少しだけ、優しい温もりを感じている自分がいた。
こんな自分、認めたくない。
本当は、ね。
★羞恥心
【END】