澪の言葉に、稚尋は目を見開いて驚いた。
それは、がっかりしたように、つまらなそうにも見えた。
「……見たの?」
稚尋の声はいつもより低かった。
「見たくて見たんじゃないし……っ」
そう、動けなかっただけ。あれは不可抗力だ。
「……ふーん」
稚尋は焦る素振りも見せず、ただ澪を見つめていた。
「何よ、その返事。私以外にも……可愛いなんて、何度も言ったんでしょう?」
全部見てたから、分かってしまう。
「……いつ、それ」
稚尋は澪を真っすぐに見つめ、言った。
その顔に笑顔はない。
耐えきれず、澪は視線をそらしながら答えた。
「この前の……」
「女の名前は?」
そう言われ、気づいた。
そうか。
稚尋は、そうやって何人とも関係を持っていたんだ。
どの娘と一緒だったか、なんて、検討もつかないんだ……。
「薫って……」
分かってた。
そう言う男の子なんだってことも。
だけど、悔しい。
澪の答えに、稚尋はため息をつきながらぶっきらぼうに答えた。