「姫」
「は?」
体を背けたのがいけなかったのか、稚尋はさらに澪をきつく抱きしめた。
その手が、とても温かかった。
澪は唇を噛み締めた。
そんな澪を見て、稚尋はフッと微笑んだ。
真っ赤な顔には似合わず、瞳からは涙が零れた。
「……姫、信じてよ。俺と雛は、別に付き合ってなんかいない」
「稚尋……」
稚尋は唇を澪の首に近づけた。
その表情は、とても切なく見えた。
「……やめてよ」
澪のか細い声が、保健室に響く。
「その方が、いーだろ?」
そう言って、稚尋は微笑した。
「なっ!……意味わかんない!」
あっと言う間に澪の自由は稚尋に失われてしまう。
澪は、ただ涙を流すだけだった。
「ちょっ……!」
稚尋の指が、澪のワイシャツのボタンにかかった。