* * *
澪は保健室のベッドで一人、泣いていた。
「っ……っ……」
涙が止まらない。
澪は信じようとしていた人が、信じられなくなってしまいそうだった。
私……また騙されちゃったのかな?
そう思うと、涙がとまらなかった。
その時、保健室の扉が開いた。
「はぁっ、はぁ……」
荒い呼吸が聞こえる。
その人物は、澪のうずくまるベッドの前に立つと、その前の薄いカーテンを勢いよく開けた。
その人物と澪の視線がぶつかる。
「ち……ひろ」
目の前にいる稚尋は、表情一つ変えずに、ただじっと澪を見つめていた。
そんな稚尋から、澪も視線を外す事が出来なかった。
「ち……ひろ?」
澪が再度そう呼びかけた瞬間だった。
「!?」
稚尋は澪を抱き起こし、そのまま抱きしめた。
稚尋の匂いが近い。
それだけで、澪は性懲りもなく、目眩を起こしそうになってしまう。