澪が走り去った後、稚尋は雛子を突き放した。



「雛、どういうつもりだ」


澪を泣かせやがって。


お前も、澪を騙してたのか?

悪びれる素振りのない雛子に、稚尋は呆れたように大きなため息をついた。


稚尋を見て、雛子はニヤリと笑う。



「どう言うつもりって……雛はちーに会いに来たんだよ?」



「説明になってない」



甘ったるい声で呟く雛子の声を、稚尋は切り捨てた。

それを見て、雛子は頬を膨らませた。


なによ。


なによ……!



「フンッ……形勢が変わったみたいね?ちーが好きな雛に、雛が嫌いなちー」


昔は逆だった。


そう呟きながら、雛子はまた稚尋の腕に擦り寄った。




「嫌いじゃないけど、好きでもない」


確かにほんの少し前は、稚尋はお前を引きずっていた。



だけど、澪に会って変わったんだ。



「曖昧ね」


そう言って、雛子はフッと鼻で笑った。



そして。