「姫、次の借り物競争。分かってるよな?」
稚尋に耳元で囁かれ、澪の背中に痺れが走った。
あの日の約束。
“ビリ以外だったら、ご褒美あげる”
「無理!」
ご褒美って何考えてんのよ……馬鹿。
「無理って……絶対やめねぇよ?何言われても」
「はぁ?」
ここでそんな事言わないでよ。
《借り物競争に出場する選手の皆さんは、入場門に集まって下さい。繰り返します……》
稚尋の手を振りほどこうとした瞬間、一番嫌な放送が入った。
澪は思わずため息をつく。
そんな澪を見て、稚尋がニヤリと笑った。
「あ、放送だ。行こうよ!澪」
瑛梨奈が澪の手を引いた。
「あ、うん」
でも、仕方ない。
意を決して、澪は立ち上がり、歩き出した。
「姫、頑張れ」
稚尋の声が聞こえる。
稚尋も出るんでしょーが。
「知らないよっ!」
そう言い残すと、澪は瑛梨奈と共に入場口へと走った。
★ちょっと待ってよ
【END】