そんな私の行動に、本当はどんな気持ちだったの?


すぐに、諦めようとか思わなかった?



澪は稚尋の手を、そっと離す。


「…………姫?」


その笑顔は、自分を守るためのものだったんじゃないの?



「……名前で呼んで」



澪は稚尋の事を何も知らない。



たった数カ月しか一緒にいないけど。


「…………澪」


稚尋がそれでもいいんなら、そんな私でも、笑っててくれるなら。



「……馬鹿」



気持ちは素直なのに、体が言う事を聞いてくれない。



“好き”



そうあなたに言おうとするけれど、澪の口から出る言葉は。



“嫌い”


分かってる。


そんなこと言われたら、誰だって傷つくって事くらい。


暎梨奈の事があったから、それは尚更身に染みてる。

きっと、私は弱いから。


私だったら直ぐに泣いてしまう。



私には、傷を隠して笑い続けるなんて出来ない。



私は、稚尋みたいにはなれない。


「……キス、してもいい?」



教室の二人を、夕日だけが幻想的に映し出していた。


それはとても美しく。


映画のワンシーンのようだった。