「……稚尋?」
「………………」
稚尋は何も言わなかった。
「…………」
どこに向かっているかも分からず、澪は稚尋についていく。
「……ごめん澪」
「え?」
稚尋が弱々しい顔で澪を見た。
全てが、初めて見る稚尋だった。
稚尋はポケットをごそごそとまさぐりながら、呟いた。
「今は、お前の口から聞きたくない」
「どうして?」
どうしてそんなに弱ってるの?
今日だって、どうして私をデートに誘ったの?
ねぇってば。
何か言って。
「澪……お前、絶対に俺から離れんなよ……?」
稚尋はそう言って、ポケットに入れていた手を出した。
「稚……尋?」
稚尋が取り出したのは、イルカのネックレスだった。
「……澪」
水槽の中では、優雅に泳ぐ二頭のイルカがいた。
★スイートな1日
【END】