瑛梨奈の言葉を聞いた稚尋は、笑顔になった。
「だからどうした?」
そして、瑛梨奈に言った。
「は……?」
「瑛梨奈。お前、俺が澪に何も話してないと思った?澪は俺のそんなこと、とっくに知ってるんだよ」
初めは確かに傷ついた。
なんで私が遊ばれなきゃいけないんだっ!なんてすごく悩んだ。
でも辛かったのは、私より稚尋なんだってわかったから、真っ正面から全て受け止める。
そういう覚悟は出来ているつもりだ。
「……あ、そう。なら、えりはもう負けちゃうんだ…………?せっかく、二年かけて、中学生活諦めてまで頑張ったのに………っ……酷いよ……」
ポタリと瑛梨奈の頬を伝った涙。
瑛梨奈の泣き顔なんて、初めて見た。
今までの感情を流し出すように、瑛梨奈は鳴咽混じりに泣き続けた。
瑛梨奈は、稚尋を睨み付けた。
その表情はまるで鬼の形相だ。
「あんただけは許さない……一生、えりを忘れさせはしないっ!」
そう言うと、瑛梨奈はポケットからカッターナイフを取り出し、一気に刃を出して見せた。
太陽に反射して、刃がキラリと妖しく光る。
澪はゴクリと生唾を飲み込む。