「で。後は澪を傷つけて、奪っちゃえば……えりの計画は完成って訳」




そう言って、瑛梨奈は笑顔で澪に手を伸ばした。




その手は澪のワイシャツを掴む。



「大嫌いなの。えりの純情を踏みにじった稚尋も。大好きだった稚尋を奪う澪も」



「……っ……!」



瑛梨奈の澪のワイシャツを掴む手に、力が入ったのが分かった。



澪は突然の事で、体が動かない。



でも。



「えり、私たち親友だったよね……?」


それだけは、えりに笑顔で言って欲しかった。



瑛梨奈を見つめる澪に、瑛梨奈は笑顔で答えた。





「親友?……始めから、えりと澪の間にそんなものなんてないよ?思ってたとしたら……澪だけ」



そう言って、瑛梨奈は皮肉を込め、笑った。



それだけは……言ってほしくなかったのに。


最後の希望まで、奪われた気がした。



「澪はね?稚尋の宝物なんだって。だから、えり。泥棒しちゃった」




そう言うと、瑛梨奈は先程までワイシャツを掴んでいた手を放した。



澪はその場に崩れ落ちる。


言葉のかわりに土に染み込んだのは……悲しみの涙だった。



澪はただ、涙を流すしか、なかった。