「えり～！！」


朝一番で教室の扉を勢いよく開けた澪。


瑛梨奈は自分の席に座って、珍しく本を読んでいた。


「今日の一時間目、二人でサボらない？」



澪が言うと、瑛梨奈は露骨に驚いた表情を見せた。



「えっ、稚尋はどうしたの？」



「……知らない。置いてきたし」



正確には、置いて行かれたんだけど。



稚尋にあんなことされたなんて、瑛梨奈に言える訳がない。


恥ずかしい。



「……んー、珍しいね？澪がえりを誘うなんて」


瑛梨奈は、この学校に入って初めて出来た友達だ。



成績も、生活態度もいい瑛梨奈をサボりに巻き込もうなんて、思ったことがなかった。





けれど今日は特別だ。



稚尋のことを聞かなくてはいけない。



「……稚尋のことが聞きたくて」




澪は親友の瑛梨奈を信頼している。



澪は瑛梨奈が大好きだ。



少し考えるフリをして、瑛梨奈は澪に笑顔を向けた。



「いいよっ！」



そう言って、澪と瑛梨奈は中庭に向かった。



「やっぱり、稚尋は大嫌い……」




瑛梨奈がそう呟いたが、風のせいでよく聞き取ることが出来なかった。



「え……？」




「ううん。なんでもない！」




「そっか」



瑛梨奈は「うん！」と満面の笑みを見せる。




島田 瑛梨奈は、空に向かってクスリと微笑んだ。