保健室の隅で怯える稚尋に、味方がまた立ち上がる勇気をくれた。



『頑張りな』



冬歌が、笑顔で稚尋に言った。




『もういい加減、忘れなさいよ……』




雛子を忘れろって?



『まだ……二年だから、な』



俺は雛子を傷つけたんだぞ?


だから、澪と被せても、雛子を愛したかったんだ。



傷を癒さなきゃ。
そう思っていた。


『やっぱり……あんた達は本命同士だね』



…………忘れたいさ。


出来るなら、雛子を忘れたい。





過去に捕われたくなんかないのに。


どうしても、頭の隅に焼き付いて離れないんだ。





『朝宮、好きなんでしょ?』



あぁそうか。


今俺が好きなのは、澪なんだ。




久崎 雛子じゃない。




朝宮 澪なんだ──……。