どのように面会を終え、どうやって帰ってきたのか。ケンにその記憶はなかった。ただ道中、ひたすら呪詛と後悔の言葉を吐き続けた。混乱した感情をひたすらたれ流した。

孤児院では食事前に祈りを捧げたが、一度だって神など信じちゃいなかった。
それが正しかったと証明された。
この世に神などいない。
もしいるとしたら、こんな試練を与え続ける神を、俺がこの手で殺してやる。
ボブの葬式だと?
行けるわけがあるか。
ケイトの顔を見たらその場で殺す。
必ず殺す。
ボブを・・・あんなにいい奴を裏切った売女め。
いつか報いを受けて地獄に堕ちるがいい。
ボブに対する仕打ちを後悔しながら業火に焼かれてしまえ。
ボブ・・・なぜ死んだ、ボブ。
大丈夫だって言ったよな。
あれは嘘だったのか。
俺はあの時、なぜボブに一緒に来ないかと言ってあげられなかったのか。
ボブは俺を助けてくれた。今度は俺が助ける番だったんだ。
リック・・・助けてくれ兄貴。
あんたはマイティ・リックだろ?
俺をここから救い出せるはずだ。
リックに会いたい。
他の仲間たちにも。
そうだ、思い出した。
完全に思い出したぞ。
俺はあの時、飛び去るヘリの中で誓ったんだ。
必ず戻るって。
待っててくれ、みんな。
もうちょっと俺に時間をくれ。
故郷に連れ帰ってやるからな。
そのためにも先ずは金だ。
金が必要だ。
だが、のんびり稼いでる時間などない。
手っ取り早く大金を手に入れるには・・・

明確な意思による行動ではなかった。無計画で衝動的なものだった。自暴自棄になったケンが思いついた、大胆不敵というよりもむしろ無謀に近い計画。それは唐島興行のヘロインを持ち出して、同じ穴のムジナにまとめて売りつけるというものだった。
もちろん売りさばく相手の当てがあるわけではない。だが、大阪か東京か・・・大都会に行けばどうにかなるだろう。先ずはヘロインを盗み出して沖縄から出ることだ。