ケンにとっても、悦子や舞子にとっても思いがけず楽しい日々となった数日間が過ぎた。
休暇も終わりが近づきケンが沖縄に帰る日には、舞子が駅まで見送りにきた。
「ここ好きだから、また戻ってくるを、約束しますねぇ」
見つめられながらそう言われて恥ずかしくなり、思わず目をそらした舞子は、照れ隠しにそっけなく答えた。
「うん。暇だったらで良いいから」
ケンを乗せて走り去る電車を見送りながら、舞子は早くも自分の言葉に後悔していた。可愛げないよなぁ、わたしって・・・。
落胆しながら帰路に着く舞子は、途中で思わず「あ・・・」と声を漏らした。来春には、きっと自分は東京で暮らす女子大生になっていて、天ヶ浜にはいないのだ。
「もう会えないじゃん」
やり場のないやるせなさが胸に込み上げてきた。それは舞子自身が動揺するほど強烈な感情だった。