気がつくと、店内の全てのロウソクは消えていて、バックライトに照らされた希望のゲルニカだけが宙に浮かんで見えた。
そして、店の外から歌声が聞こえてきた。
まさか・・・。
その歌声は、ケンには間違えようのないものだった。外から聞こえてくるのは、さっきレコードで聴いていた曲「スーサイド・イズ・ペインレス」だ。それを歌っているのはフォース・リーコンの、死んだはずのヴァイパーの仲間たちだ。
そんな馬鹿な。
ケンは慌てて立ち上がった。そのはずみでテーブルのワインボトルが倒れて床に落ちると、ゴロゴロと音を立てて転がった。
乱暴とも言える勢いで店のドアを開けて外を見た。そこには戦闘服を着た仲間たちがいた。みんな、肩を組んで笑いながら歌っていた。音程が外れているのもお構いなしに大声で歌う姿は楽しそうだった。
ケンは、目の前の光景に呆然とした。
コロンビアのジャングルで死んだはずじゃなかったのか?
「みんな、無事だったのか・・・」
おずおずと尋ねるケンに、チームの一人が言った
「なに言ってやがんだよ、ケン」
「いや、その・・・俺はてっきり」
ケンは思い当たった。そうか。彼らはきっとゴッズ・ハンマー作戦後も、俺の知らない極秘任務に従事していたのだ。
軍は、敢えて俺には連中が生きていることを知らせず、欺瞞作戦の一部として葬式までやってみせたのだろう。敵を欺く前に先ず味方からというが、ここまで大掛かりに徹底した秘密主義が貫かれたとは、よほど重要な任務だったに違いない。
楽し気に歌う仲間から少し離れて、兄リックが立っていた。リックは歌には加わらずに静かにケンの方を見ていた。
飛び去るヘリの上から、最後まで勇敢に戦って敵弾に倒れた兄の最期を、この眼ではっきりと見たはずだが。
「兄貴!無事だったんだな、心配したぜ、リック。マジでよぉ」
リックは何も言わずにケンの方を見たまま佇んでいた。
ケンは知らないうちに泣いていた。
とめどなく溢れ出る涙を拭いながら、チームの仲間たちに声をかけた。
「それにしても、よく俺がここにいるって分かったな。まぁ、話はゆっくり聞かせてもらうから、とりあえず中に入れよ」
手招きするケンに対し、一人の隊員が言った。
「それが、入れないんだ」
「え?」
「それより、ケン、作戦は成功したんだよな」
その言葉を聞いた瞬間、ケンの背筋を氷の稲妻が駆け抜けて全身に鳥肌が立った。
別の隊員が言った。
「勝ったんだよな?そうだろ」
「そ、それが、その・・・」
言葉に詰まるケンは、助けを求めるようにリックに視線を移した。
リックは先程よりも少し悲しそうな顔をしていた。
「・・・ああ、か、勝ったさ。もちろんだ。俺たちがしくじるはずがないだろ」
辛うじて答えるケンに、別の隊員が言った。
「だよな!だったら、とっとと国へ帰って一杯やろうぜ」
「さぁケン、何をチンタラやっていやがる。急がないと置いてくぞ。こんなジャングルで一生暮らしたいってんなら別だがな」
「帰ったら冷えたビールに、いい女たちが待ってるんだぜ、ケン」
言葉を失って、ただ立ち尽くすことしかできないケン。その肩に優しく手を置く者があった。驚いて振り向くと、そこにはボブ・ワナメイカーが立っていた。
そして、店の外から歌声が聞こえてきた。
まさか・・・。
その歌声は、ケンには間違えようのないものだった。外から聞こえてくるのは、さっきレコードで聴いていた曲「スーサイド・イズ・ペインレス」だ。それを歌っているのはフォース・リーコンの、死んだはずのヴァイパーの仲間たちだ。
そんな馬鹿な。
ケンは慌てて立ち上がった。そのはずみでテーブルのワインボトルが倒れて床に落ちると、ゴロゴロと音を立てて転がった。
乱暴とも言える勢いで店のドアを開けて外を見た。そこには戦闘服を着た仲間たちがいた。みんな、肩を組んで笑いながら歌っていた。音程が外れているのもお構いなしに大声で歌う姿は楽しそうだった。
ケンは、目の前の光景に呆然とした。
コロンビアのジャングルで死んだはずじゃなかったのか?
「みんな、無事だったのか・・・」
おずおずと尋ねるケンに、チームの一人が言った
「なに言ってやがんだよ、ケン」
「いや、その・・・俺はてっきり」
ケンは思い当たった。そうか。彼らはきっとゴッズ・ハンマー作戦後も、俺の知らない極秘任務に従事していたのだ。
軍は、敢えて俺には連中が生きていることを知らせず、欺瞞作戦の一部として葬式までやってみせたのだろう。敵を欺く前に先ず味方からというが、ここまで大掛かりに徹底した秘密主義が貫かれたとは、よほど重要な任務だったに違いない。
楽し気に歌う仲間から少し離れて、兄リックが立っていた。リックは歌には加わらずに静かにケンの方を見ていた。
飛び去るヘリの上から、最後まで勇敢に戦って敵弾に倒れた兄の最期を、この眼ではっきりと見たはずだが。
「兄貴!無事だったんだな、心配したぜ、リック。マジでよぉ」
リックは何も言わずにケンの方を見たまま佇んでいた。
ケンは知らないうちに泣いていた。
とめどなく溢れ出る涙を拭いながら、チームの仲間たちに声をかけた。
「それにしても、よく俺がここにいるって分かったな。まぁ、話はゆっくり聞かせてもらうから、とりあえず中に入れよ」
手招きするケンに対し、一人の隊員が言った。
「それが、入れないんだ」
「え?」
「それより、ケン、作戦は成功したんだよな」
その言葉を聞いた瞬間、ケンの背筋を氷の稲妻が駆け抜けて全身に鳥肌が立った。
別の隊員が言った。
「勝ったんだよな?そうだろ」
「そ、それが、その・・・」
言葉に詰まるケンは、助けを求めるようにリックに視線を移した。
リックは先程よりも少し悲しそうな顔をしていた。
「・・・ああ、か、勝ったさ。もちろんだ。俺たちがしくじるはずがないだろ」
辛うじて答えるケンに、別の隊員が言った。
「だよな!だったら、とっとと国へ帰って一杯やろうぜ」
「さぁケン、何をチンタラやっていやがる。急がないと置いてくぞ。こんなジャングルで一生暮らしたいってんなら別だがな」
「帰ったら冷えたビールに、いい女たちが待ってるんだぜ、ケン」
言葉を失って、ただ立ち尽くすことしかできないケン。その肩に優しく手を置く者があった。驚いて振り向くと、そこにはボブ・ワナメイカーが立っていた。