だが攻撃を止めて、三人がこちらに向かって走り出した瞬間に、敵弾の雨が背後から容赦なく彼らを襲うだろう。まさに地獄の真っただ中に釘付けの状態だ。
その時、RPGでこちらに狙いを定めている敵の姿が目に入った。
その瞬間ダニエルズの脳裏を、二年前のソマリアで米軍を襲った悲劇「モガディシュの悪夢」がよぎった。あの戦闘で、ソマリア民兵に撃墜されたブラックホークのパイロット救出に志願し、そして戦死したデルタ隊員、ランディ・シュガート軍曹とゲーリー・ゴードン曹長の二人は、ダニエルズの親友だった。
ダニエルズの隣にいた狙撃兵が、いち早くRPGの脅威を排除した。
だが、ますます正確になる敵の銃火は、ブラックホークの機体に穴を穿つだけでなく、中にまで飛び込んでくる。
限界は目の前だ。
カリブ海上の空母で、今や遅しとダニエルズからの発進許可を待つホーネット。その命令を下すまでの時間的猶予は、多く見積もってもあと三分程度だろう。
だがその前に、このヘリが撃墜される可能性の方がむしろ高い。
ダニエルズは、救出した捜査官が乗り込んでいるもう一機のブラックホークを先に離脱させた。これでようやく、神の鉄槌作戦における任務の最低ラインはクリアだ。
「ダニエルズ隊長、限界だ。このままでは離陸できなくなる」
そう叫んだのは、コックピットの機長だった。
このヘリを操るのは、特殊作戦のための訓練を積んだナイトストーカー(闇夜に忍び寄る者)と呼ばれる連中である。世界一の操縦技術を持つ彼らは、Night Stalkers Don't Quit(ナイトストーカーは諦めない)というモットーが示す通り、特殊部隊の連中でさえ無謀だと考えるウルトラC級の操縦を難なくやってのける。そんな連中が限界だと言っているのだから、本当に限界なのだ。やむを得まい。
「了解だ。離陸してくれ」
ダニエルズは動揺を隠すために、あえて機械的な口調で命令した。
馬鹿な!仲間が地上で戦っているのに見捨てて行くのか!
銃撃による胸部の打撲でまともに声を出せないケンは、心の中で叫んだ。
俺の兄貴が、リックがまだ戦っているんだ!戻れ。戻ってくれ
だが、その願いもむなしく、ふわりと浮上したブラックホークが徐々に高度を上げてゆく。
このまま逃げるくらいなら、俺は降りて戦う。それで死んだほうがましだ。俺を地上に降ろせ!
呻き声を上げながら、もがくようにヘリから身を乗り出そうとするケンを、デルタの隊員がどうにか押さえつけた。
ダニエルズは無線機に向かって怒鳴った。
「こちらアルバトロス。離脱した!ホーネットを寄こせ」
その時、飛び去るブラックホークの機中からケンが見た兄リックは、地面に片膝をついており、手にした拳銃は最後の一発まで撃ち尽くしていた。
傍らには二人の仲間の死体も見えた。
リックがおもむろに振り返ると、ケンたちの乗るヘリを見上げた。
リックと目が合ったケンは驚いた。
戦場に一人見捨てられ、確実なる死という運命が目前に控えているにも関わらず、兄は優しく笑っていたのだ。
まるで何かから解放され、心からほっとしている様にも見えた。
一体どうして・・・。
その時、RPGでこちらに狙いを定めている敵の姿が目に入った。
その瞬間ダニエルズの脳裏を、二年前のソマリアで米軍を襲った悲劇「モガディシュの悪夢」がよぎった。あの戦闘で、ソマリア民兵に撃墜されたブラックホークのパイロット救出に志願し、そして戦死したデルタ隊員、ランディ・シュガート軍曹とゲーリー・ゴードン曹長の二人は、ダニエルズの親友だった。
ダニエルズの隣にいた狙撃兵が、いち早くRPGの脅威を排除した。
だが、ますます正確になる敵の銃火は、ブラックホークの機体に穴を穿つだけでなく、中にまで飛び込んでくる。
限界は目の前だ。
カリブ海上の空母で、今や遅しとダニエルズからの発進許可を待つホーネット。その命令を下すまでの時間的猶予は、多く見積もってもあと三分程度だろう。
だがその前に、このヘリが撃墜される可能性の方がむしろ高い。
ダニエルズは、救出した捜査官が乗り込んでいるもう一機のブラックホークを先に離脱させた。これでようやく、神の鉄槌作戦における任務の最低ラインはクリアだ。
「ダニエルズ隊長、限界だ。このままでは離陸できなくなる」
そう叫んだのは、コックピットの機長だった。
このヘリを操るのは、特殊作戦のための訓練を積んだナイトストーカー(闇夜に忍び寄る者)と呼ばれる連中である。世界一の操縦技術を持つ彼らは、Night Stalkers Don't Quit(ナイトストーカーは諦めない)というモットーが示す通り、特殊部隊の連中でさえ無謀だと考えるウルトラC級の操縦を難なくやってのける。そんな連中が限界だと言っているのだから、本当に限界なのだ。やむを得まい。
「了解だ。離陸してくれ」
ダニエルズは動揺を隠すために、あえて機械的な口調で命令した。
馬鹿な!仲間が地上で戦っているのに見捨てて行くのか!
銃撃による胸部の打撲でまともに声を出せないケンは、心の中で叫んだ。
俺の兄貴が、リックがまだ戦っているんだ!戻れ。戻ってくれ
だが、その願いもむなしく、ふわりと浮上したブラックホークが徐々に高度を上げてゆく。
このまま逃げるくらいなら、俺は降りて戦う。それで死んだほうがましだ。俺を地上に降ろせ!
呻き声を上げながら、もがくようにヘリから身を乗り出そうとするケンを、デルタの隊員がどうにか押さえつけた。
ダニエルズは無線機に向かって怒鳴った。
「こちらアルバトロス。離脱した!ホーネットを寄こせ」
その時、飛び去るブラックホークの機中からケンが見た兄リックは、地面に片膝をついており、手にした拳銃は最後の一発まで撃ち尽くしていた。
傍らには二人の仲間の死体も見えた。
リックがおもむろに振り返ると、ケンたちの乗るヘリを見上げた。
リックと目が合ったケンは驚いた。
戦場に一人見捨てられ、確実なる死という運命が目前に控えているにも関わらず、兄は優しく笑っていたのだ。
まるで何かから解放され、心からほっとしている様にも見えた。
一体どうして・・・。