タタタ、タタタ、タタタと小気味よい連射音を鳴らしながら、あっという間に最初の弾倉を打ち尽くすと、すかさずマグチェンジして再び連射を開始した。
ケンは口の中に広がる血の味を意識しながら、先程までの興奮や勇気がすっかり萎えている自分に気づいた。
なぜ、俺はあんなにも強気だったのか。本当の戦闘を知らない愚かな若造だったのか。
銃火のど真ん中で自問自答を繰り返すケンだったが、耳元をかすめる銃弾が空気を切り裂く音で現実に引き戻された。
考える時間は後でいくらでもあるだろう。今は、仲間と共にこの窮地を脱出することに専念するのだ。
その時、急に格闘術の先生だったトゥワンコ師のことを思い出した。
「冷静沈着な洞察力こそが最強の武器なのです」
ケンは、ボブに倣って三点連射で敵の隊列目がけて撃ちまくった。
だが、これでは敵を止めることはできない。
飛び交う銃弾の中、今すぐ逃げろと警報を鳴らし続ける生存本能に抗いながらケンは冷静に考えた。そして閃いた。
クレイモア地雷だ。
「リック、クレイモアだ!」
ケンは、兄に向って叫んだ。
リックは力強く頷いた。
この状況にあっても、破れかぶれになることなく、しっかりと前を見続けてリーダーの役割を果たしているリック。その姿に勇気づけられながらケンは思った。さすが俺の兄貴、マイティ・リックだ。
リックはあくまで冷静だった。元スペツナズ兵士が発射したバズーカ砲の直撃を受けて、一瞬にして半数近くの仲間を失った。人的損耗なしで全員を無事に帰還させるという、そんな誓いが果たされないと決まった時、リックはその事実を素直に受け止めた。
残酷な現実を受け入れられずにパニックに陥って、使い物にならなくなるリーダーもいるがリックは違った。
人間、死ぬ時はどうあがいても死ぬのだ。
銃弾が止むことなく飛び交う中で、リックは妙に達観した気分を味わい、その数秒後には完全に気持ちを切り替えていた。
「全速力で、クレイモアの位置まで退却」
リックの命令を合図に、ケンたちは一旦射撃を中止すると、雨でぬかるんだ地面に足を取られながらも全力で走った。
この逃走経路の三ヶ所にクレイモア対人地雷を仕掛けておいたが、すでに二か所は通過してしまった。最後の一ヶ所に意地でも辿り着き、うるさい敵を黙らせるしかない。
暗闇の中を必死で進みながら、ケンは胸の受信機が点滅するのを待った。
やがて受信機が点滅しクレイモア地雷の位置を告げた。金銀財宝を発見するよりも嬉しかった。
「クレイモアはここだ!」
叫びながらクレイモア地雷の向きを確認し、リモコンを取り出した。
「よし、引きつけてブチかませ」
ボブが叫んだ。
だが引きつけるまでもなく敵は五十メートルまでに迫っていた。有効加害距離だ。
ケンはスイッチを入れて起爆させた。
次の瞬間、弁当箱のような形をしたクレイモア地雷のフタが開き、中から七百個の鉄球が後方目がけて発射された。
六十度の角度で扇型に広がる殺傷ゾーンにいた人間は、一人の例外もなくひき肉と化し、この世から消滅した。
血で染まった赤色の霧がその付近を漂っていた。
「行くぞ!」
ケンたちは、再びアルファ・ワン目がけて全速力で進みだした。
ケンは口の中に広がる血の味を意識しながら、先程までの興奮や勇気がすっかり萎えている自分に気づいた。
なぜ、俺はあんなにも強気だったのか。本当の戦闘を知らない愚かな若造だったのか。
銃火のど真ん中で自問自答を繰り返すケンだったが、耳元をかすめる銃弾が空気を切り裂く音で現実に引き戻された。
考える時間は後でいくらでもあるだろう。今は、仲間と共にこの窮地を脱出することに専念するのだ。
その時、急に格闘術の先生だったトゥワンコ師のことを思い出した。
「冷静沈着な洞察力こそが最強の武器なのです」
ケンは、ボブに倣って三点連射で敵の隊列目がけて撃ちまくった。
だが、これでは敵を止めることはできない。
飛び交う銃弾の中、今すぐ逃げろと警報を鳴らし続ける生存本能に抗いながらケンは冷静に考えた。そして閃いた。
クレイモア地雷だ。
「リック、クレイモアだ!」
ケンは、兄に向って叫んだ。
リックは力強く頷いた。
この状況にあっても、破れかぶれになることなく、しっかりと前を見続けてリーダーの役割を果たしているリック。その姿に勇気づけられながらケンは思った。さすが俺の兄貴、マイティ・リックだ。
リックはあくまで冷静だった。元スペツナズ兵士が発射したバズーカ砲の直撃を受けて、一瞬にして半数近くの仲間を失った。人的損耗なしで全員を無事に帰還させるという、そんな誓いが果たされないと決まった時、リックはその事実を素直に受け止めた。
残酷な現実を受け入れられずにパニックに陥って、使い物にならなくなるリーダーもいるがリックは違った。
人間、死ぬ時はどうあがいても死ぬのだ。
銃弾が止むことなく飛び交う中で、リックは妙に達観した気分を味わい、その数秒後には完全に気持ちを切り替えていた。
「全速力で、クレイモアの位置まで退却」
リックの命令を合図に、ケンたちは一旦射撃を中止すると、雨でぬかるんだ地面に足を取られながらも全力で走った。
この逃走経路の三ヶ所にクレイモア対人地雷を仕掛けておいたが、すでに二か所は通過してしまった。最後の一ヶ所に意地でも辿り着き、うるさい敵を黙らせるしかない。
暗闇の中を必死で進みながら、ケンは胸の受信機が点滅するのを待った。
やがて受信機が点滅しクレイモア地雷の位置を告げた。金銀財宝を発見するよりも嬉しかった。
「クレイモアはここだ!」
叫びながらクレイモア地雷の向きを確認し、リモコンを取り出した。
「よし、引きつけてブチかませ」
ボブが叫んだ。
だが引きつけるまでもなく敵は五十メートルまでに迫っていた。有効加害距離だ。
ケンはスイッチを入れて起爆させた。
次の瞬間、弁当箱のような形をしたクレイモア地雷のフタが開き、中から七百個の鉄球が後方目がけて発射された。
六十度の角度で扇型に広がる殺傷ゾーンにいた人間は、一人の例外もなくひき肉と化し、この世から消滅した。
血で染まった赤色の霧がその付近を漂っていた。
「行くぞ!」
ケンたちは、再びアルファ・ワン目がけて全速力で進みだした。