「こちらブラヴォー・ツー。了解。ケン坊、撤収だ。アルファ・ツーに向かうぞ。大急ぎだとさ」
一切の無駄口を叩くことなく、ケンは素早く行動した。何が起きたのかは分からないが、激しい戦闘になる予感をひしひしと感じていた。
上等だ。俺たちが海兵隊最強と言われるのが伊達じゃないってことを、麻薬の売人どもに死を持って教えてやる。
厳しい訓練で磨き上げた戦闘技術を発揮するチャンスの到来に、ケンの気持ちは高ぶった。そこに恐怖のつけ入る隙は一切なかった。むしろこの地球上でもっとも頼りにできるタフな仲間たちと一緒に戦えることに、喜び混じりの興奮を感じていた。
アルファ・ツーでは、リックたちが撤収の準備を開始していた。
やがて前方から、捜査官を連れたデルタ隊員がこちらに向かって全速力で走ってくるのが見えた。
工場からの追跡者はない。このまま引き下がってくれればいいのだが。
ライフルを構えて援護の態勢を取りながら、リックは心の中で祈っていた。
監視所内に飛び込んでくるなり、ダニエルズがリックに怒鳴った。
「一体どうなってる!」
「こいつが銃を暴発させたようです」
裏切り者の容疑が晴れて、拘束を解かれたコロンビア軍士官の方を指さしながらリックが答えた。
怒りで頭に血が上ったダニエルズは、思わず士官を殴りたい衝動に駆られたが、そんな時間はない。今は一秒でも惜しい緊急事態だ。
「俺たちはこのままアルファ・ワンに向かう。お前たちも全速力で俺たちの後を追え」
傍らでは、デルタ隊員が無線でブラックホークヘリの出動を要請していた。今や逃げ隠れする必要はない。一刻も早くアルファ・ワンにヘリを待機させておく必要がある。
「隊長。この疫病神を連れてってください」
リックはコロンビア軍士官を無理やり突き出した。
ダニエルズは、士官など存在しないかのように一瞥さえくれなかった。
こいつのお守りをする気はない。一緒に来たければ勝手にするがいい。俺達デルタは救出したタンゴと一緒に全力でアルファ・ワンを目指すだけだ。
ダニエルズはリックに面と向かって言った。
「お前たちも絶対に遅れるなよ。分ってると思うが、待ってる時間は無い。0400時までにアルファ・ワンに辿り着けなかった場合には・・・」
冗談ともつかない調子でダニエルズは続けた。
「お前たちにはジャングルの住人になってもらう」
軽口に付き合っている余裕はなかった。リックはむっとした調子で答えた。
「こっちの心配をする暇があったらさっさと出発してはどうですか、少尉殿」
にやりと笑ったダニエルズが、リックの肩に軽いパンチを打ち込みながら言った。
「その調子だ」
デルタ隊員は夜のジャングルを疾駆すべく、各々が暗視ゴーグルを装着した。
ダニエルズ隊長は、予め用意してきた予備のゴーグルを捜査官に渡すと、五人はあっという間にジャングルの闇に消えていった。
コロンビア軍士官は、置いて行かれては堪らないとばかりに、来た時とは別人のような素早さで慌てて後を追いかけていった。
監視についていた全てのセルがアルファ・ツーまで戻り、ようやくヴァイパーの全隊員が再集結したのは、それから五分程経ってからだった。この五分間はリックにとっては、五時間にも感じられた。
「アルファ・ワンに全力で向かう。遅れた者はこのジャングルで一生暮らしてもらう」
リックもダニエルズをまねてみた。冗談などほとんど言ったことのないリックの口からでたその言葉を聞いて、みんなが笑った。おかげで、何の益にもならない無駄な緊張感が抜けていった。それでこそリーダーだ。
一切の無駄口を叩くことなく、ケンは素早く行動した。何が起きたのかは分からないが、激しい戦闘になる予感をひしひしと感じていた。
上等だ。俺たちが海兵隊最強と言われるのが伊達じゃないってことを、麻薬の売人どもに死を持って教えてやる。
厳しい訓練で磨き上げた戦闘技術を発揮するチャンスの到来に、ケンの気持ちは高ぶった。そこに恐怖のつけ入る隙は一切なかった。むしろこの地球上でもっとも頼りにできるタフな仲間たちと一緒に戦えることに、喜び混じりの興奮を感じていた。
アルファ・ツーでは、リックたちが撤収の準備を開始していた。
やがて前方から、捜査官を連れたデルタ隊員がこちらに向かって全速力で走ってくるのが見えた。
工場からの追跡者はない。このまま引き下がってくれればいいのだが。
ライフルを構えて援護の態勢を取りながら、リックは心の中で祈っていた。
監視所内に飛び込んでくるなり、ダニエルズがリックに怒鳴った。
「一体どうなってる!」
「こいつが銃を暴発させたようです」
裏切り者の容疑が晴れて、拘束を解かれたコロンビア軍士官の方を指さしながらリックが答えた。
怒りで頭に血が上ったダニエルズは、思わず士官を殴りたい衝動に駆られたが、そんな時間はない。今は一秒でも惜しい緊急事態だ。
「俺たちはこのままアルファ・ワンに向かう。お前たちも全速力で俺たちの後を追え」
傍らでは、デルタ隊員が無線でブラックホークヘリの出動を要請していた。今や逃げ隠れする必要はない。一刻も早くアルファ・ワンにヘリを待機させておく必要がある。
「隊長。この疫病神を連れてってください」
リックはコロンビア軍士官を無理やり突き出した。
ダニエルズは、士官など存在しないかのように一瞥さえくれなかった。
こいつのお守りをする気はない。一緒に来たければ勝手にするがいい。俺達デルタは救出したタンゴと一緒に全力でアルファ・ワンを目指すだけだ。
ダニエルズはリックに面と向かって言った。
「お前たちも絶対に遅れるなよ。分ってると思うが、待ってる時間は無い。0400時までにアルファ・ワンに辿り着けなかった場合には・・・」
冗談ともつかない調子でダニエルズは続けた。
「お前たちにはジャングルの住人になってもらう」
軽口に付き合っている余裕はなかった。リックはむっとした調子で答えた。
「こっちの心配をする暇があったらさっさと出発してはどうですか、少尉殿」
にやりと笑ったダニエルズが、リックの肩に軽いパンチを打ち込みながら言った。
「その調子だ」
デルタ隊員は夜のジャングルを疾駆すべく、各々が暗視ゴーグルを装着した。
ダニエルズ隊長は、予め用意してきた予備のゴーグルを捜査官に渡すと、五人はあっという間にジャングルの闇に消えていった。
コロンビア軍士官は、置いて行かれては堪らないとばかりに、来た時とは別人のような素早さで慌てて後を追いかけていった。
監視についていた全てのセルがアルファ・ツーまで戻り、ようやくヴァイパーの全隊員が再集結したのは、それから五分程経ってからだった。この五分間はリックにとっては、五時間にも感じられた。
「アルファ・ワンに全力で向かう。遅れた者はこのジャングルで一生暮らしてもらう」
リックもダニエルズをまねてみた。冗談などほとんど言ったことのないリックの口からでたその言葉を聞いて、みんなが笑った。おかげで、何の益にもならない無駄な緊張感が抜けていった。それでこそリーダーだ。