康平は弱々しく息を吐くと、ケータイのディスプレイを見つめた。
 朱美の番号を表示させる。
 表示しなくても、朱美のケータイ番号は覚えている。メールアドレスもだ。
 勇也のも覚えている。
 実家の電話番号は時々忘れるくらいなのに、二人のは一度覚えてから忘れたことがない。
 ゆっくり一呼吸すると、康平は朱美のケータイへと通話ボタンを押した。
 コール五回で繋がった。
 康平は唾を飲み込んだ。
「朱美? 俺だけど」
 切りだした康平に、
『これって、勇くんの差し金でしょ?』
 朱美が楽しそうに訊いてきた。
 康平は首をすくめた。
 彼女には何もかもお見通しなのだ。