脱衣場を出た康平は、
「康平! 康平康平こうへーっ!」
 連呼しながら走ってきた朱美に抱きつかれた。
 遅れて、康平は朱美を抱きしめた。
 顔を上げた朱美は笑顔でないていた。
 康平は朱美の涙を拭いながら微笑んだ。
「康平どこ行ってたの? 今、勇くんが来てたんだよ」
「知ってる。俺もついさっき会った」
「あのね。見てこれ」
 朱美が白い羽を康平に見せた。
「俺もある」
 二人で羽を見せ合うと、顔を見合わせた。
 一瞬の間。
 朱美がクツクツと笑いだした。
「きっと勇くん、大きな翼を持った天使になったんだよ」
「イジメッ子なのにか?」
「それは康平限定だって。なんでだろう。さっきから涙腺がバカになっちゃってて、さっきまでは悲しくて涙が溢れたのに、今度は嬉しくて涙が止まらないの」
 そのまま、朱美は康平の胸に頭を持たせると、声を上げ、思い切り泣き始めた。
「俺もだ。可笑しくて涙が出てくる」
 康平は朱美を強く抱きしめ、声を上げて泣いた。


END