「お前、その影」
 康平は勇也の影を指さした。
 勇也が振り向いて影を見た。
「羽だよ羽。僕、日ごろの行いがよかったみたいでさぁ」
 向き直って屈託なく笑う勇也に、
「そっか。羽か」
 康平は勇也らしいとストンと納得した。
 納得したところで、悲しみも喪失感も消えないが、今までなかった清々しさが少し生まれた。
「似合わない。絶対に似合わない!」
 康平は泣きながらクスクスと笑った。
「わかる。僕が一番わかってる。康平をからかうことがカメラと同じくらい好きだったのに、神様って見る目ないよね」
 勇也もつられるように笑った。
「まっ、そういうことだ。もう、消えるぞ」
 勇也から笑みが消えた。
「ああ。じゃあな」
 康平からも笑みが消えた。
 康平は真っ直ぐに勇也の目を見つめた。
「じゃあね」
 勇也の体が急速に透けていく。
 最後、勇也は深い微笑みを浮かべて消えた。
 立ったまま、康平はしばらく勇也がいた場所を見つめた。
 胸が優しく満たされるのを感じる康平の前に、ヒラヒラと白いものが舞い落ちた。
(なんだ?)
 思わずそれを手に取った康平は、それを見て爆笑した。
「キザすぎだろ」
 それは白い羽だった。