「電気をつけたのって」
 涙を浮かべた康平の声が震えた。
「僕だよ」
 勇也は静かに笑った。
「お前、勇也だよな?」
 康平は改めて勇也に手を伸ばした。
 指先が勇也の体に入った。けれど、感触はない。ただの空気だ。
「そうだよ」
「生きてるんだよな?」
「だったらよかったんだけどな」
 勇也が目を細めた。
 康平は肩を震わせた。両手をきつく握り締める。
「幽霊でもいい。いてくれるよな?」
 康平の瞳から涙が後から後からこぼれてくる。これは悲しみの涙だ。
「うん」
 勇也が頷いた。
 康平はホッとした。幽霊でもいい。いてくれるならそれで……。
「もうそろそろ、この姿は見えなくなるけど、いつも傍にいるから。それだけは忘れないで」
「えっ? 消えるのか? いなくなるのか?」
 康平は勇也を捕まえようと手を伸ばした。
 けれど、手は勇也の体を抜けてしまう。
「チクショーッ!」
 康平は勇也を捕まえられない苛立ちで壁を叩いた。