「いない」
「いるでしょ、ここに」
 いつもの少し茶化したような勇也の声に、
「ここってどこだよ!」
 康平は振り返ると、声にならない悲鳴を上げた。驚きのあまり後じさりして洗濯機に激突する。
 目の前に、制服姿の勇也が立っていた。
 いつもと変わらない笑顔を向ける勇也に、康平は全身が脱力するほどの安心と涙が溢れる喜びで顔を歪めた。
「なんだよ、お前。生きてんじゃん」
 康平は覆い被さるように勇也を抱きしめた……はずが、両腕は勇也の体を通り抜けて交差した。
 体温も感触も何もない。空気そのものだ。
「えっ?」
 康平は目を大きく開いた。今の出来事が理解できなくて頭が真っ白になる。