「返事しろよ。なぁ!」
 康平は声を張り上げると、棺桶に縋るように崩れた。
 後ろに並んでいた朱美が康平の肩を抱きしめた。
 係の男が二人現れ、康平の両肩を支えるようにしてその場から引き離していく。
「お前には朱美ちゃんが入れば十分だろ?」
 いつか聞いた勇也の声が、康平の脳裏に蘇る。
(……違う。それは違う。俺、あん時認めなかったよな。勇也もいなきゃダメなんだよ。お前なしで、どう幸せになれっていうんだよ)
「お前を一人にしておけないから、こうして来てやったんだろ?」
 別の勇也の声が脳裏を過ぎる。
(もう、来ないつもりかよ。いつだって来いよ。毎日来いよ。なんなら、マンションに居座ればいい)
 会場の後ろの席に座らされた康平は、項垂れたままボロボロと泣いた。
 隣に黙って朱美が座り、康平に寄り添いながら静かに涙を零す。
 二人に声をかける者はいなかった。