「えっ?」
 思いも寄らない告白に、康平の頭が一瞬真っ白になった。想像がつかない。
「アイツって、両親いないけどジジィババァと上手くやってんだろ? 全然俺と違うじゃん」
「昔も今も、育ての二人とは全然上手くいってないの。ただ、勇くんには康平と違ってカメラがあった。夢中になれるものがあったから、勇くんは今の勇くんになったんだと思うの。幼い頃、アタシが勇くんと仲良くなったのはカメラがキッカケだったの。小学二年のときね。その時の勇くんは無口で不愛想で、全然社交的じゃなくて、一人でいることを好んでいた。ワタシはそんな勇くんを尊敬して、勝手に追いかけ疎まれてた」
 康平は「勇也が好きで追いかけてたのか?」と、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。だとしたら、三角関係確定だ。今の居心地のいい関係が崩れてしまう。康平は唯一の親友である勇也を恨んでしまいそうで怖くなった。朱美は恋愛感情があるかぎり、親友ではない。
「まるでストーカーだな」
 康平は自嘲気味に笑った。
「そうね。だってアタシ、今も昔も勇くんのファン第一号だもん」
「ファ、ファン?」
 間抜けな声を出した康平に、朱美がむくれた。
「何よ。康平くんだって勇くんの写真を凄いと思うでしょう?」
「あ、ああ」
「その腕に、仕上がった写真に惚れてるでしょう?」
「ああ」
「だったら、康平くんだって勇くんのファンじゃない」
「そういうことね」
(ストーカーとか言うからビビッた。好きは好きでも『愛してる』じゃなくて『ファン』かよ)
 康平は一先ず安心した。