「そろそろなくなる頃だとは思ってたけど、アタシ、康平くんに何度も繰り返し言ったよね。なくなる前に教えてって」
「なくなってから、しかも僕に指図されて、ようやく電話したんだよな、康平。あれ? どうしたの黙っちゃって。立派な言い訳があるならしてもいいんだよ? さっき僕にしたようなバカな言い訳なら、朱美ちゃんの拳骨が飛んでくると思うけど」
「大体どんな言い訳をしたか、想像出来るわ」
朱美が肩をすくめた。
「いつもは怒るけど、今日だけは怒る気にならないわ。カメラを置いてきた勇くんに比べれば、康平くんの金はあるのに餓死直行なんて些細なことだもん。これを片付けたら何か作るね。勇くんも食べるでしょう?」
朱美はショルダーバッグから水色のエプロンを取りだすと、広げて首にかけた。慣れた手つきで両手で紐を掴み、見えないのに腰の後ろで綺麗に蝶結びする。
「もちろん」
勇也は即答した。
「だったら、今日は勇くんの好物にするね。オムライスと目玉焼きつきナポリタン、どっちがいい?」
「どっちも!」
勇也は元気に答えた。
「珍しい。勇くんが我が儘言うなんて」
「たまにはいいでしょ」
「そうね。今日は特別にサラダつきで両方作っちゃう」
朱美が弾けるように笑った。
「やったーっ!」
勇也はガッツポーズをすると、面倒そうに立ち上がった康平の肩に寄りかかった。
「ゴメン康平。朱美ちゃんの関心を奪っちゃって」
「そんなこと知るかよ」
「強がり言っちゃって」
「言ってない!」
ムキになる康平に背を向けた勇也は、ソファに戻ると振り返った。
「なあ、ご飯出来るまでなんか観ようぜ。色々録り溜めてんだろ? そうだ。ホラー映画にしようぜ。お願いしたの、録ってくれてるよね。うち、有料のは観れないからさ」
勇也は勝手に決めてリモコンを操作した。
「しゃあねぇーなぁ」
康平は首筋に手を当てると、チラリと朱美を見てから勇也へと歩きだした。
「なくなってから、しかも僕に指図されて、ようやく電話したんだよな、康平。あれ? どうしたの黙っちゃって。立派な言い訳があるならしてもいいんだよ? さっき僕にしたようなバカな言い訳なら、朱美ちゃんの拳骨が飛んでくると思うけど」
「大体どんな言い訳をしたか、想像出来るわ」
朱美が肩をすくめた。
「いつもは怒るけど、今日だけは怒る気にならないわ。カメラを置いてきた勇くんに比べれば、康平くんの金はあるのに餓死直行なんて些細なことだもん。これを片付けたら何か作るね。勇くんも食べるでしょう?」
朱美はショルダーバッグから水色のエプロンを取りだすと、広げて首にかけた。慣れた手つきで両手で紐を掴み、見えないのに腰の後ろで綺麗に蝶結びする。
「もちろん」
勇也は即答した。
「だったら、今日は勇くんの好物にするね。オムライスと目玉焼きつきナポリタン、どっちがいい?」
「どっちも!」
勇也は元気に答えた。
「珍しい。勇くんが我が儘言うなんて」
「たまにはいいでしょ」
「そうね。今日は特別にサラダつきで両方作っちゃう」
朱美が弾けるように笑った。
「やったーっ!」
勇也はガッツポーズをすると、面倒そうに立ち上がった康平の肩に寄りかかった。
「ゴメン康平。朱美ちゃんの関心を奪っちゃって」
「そんなこと知るかよ」
「強がり言っちゃって」
「言ってない!」
ムキになる康平に背を向けた勇也は、ソファに戻ると振り返った。
「なあ、ご飯出来るまでなんか観ようぜ。色々録り溜めてんだろ? そうだ。ホラー映画にしようぜ。お願いしたの、録ってくれてるよね。うち、有料のは観れないからさ」
勇也は勝手に決めてリモコンを操作した。
「しゃあねぇーなぁ」
康平は首筋に手を当てると、チラリと朱美を見てから勇也へと歩きだした。