雨音を聞きながら、広瀬康平は半覚醒の状態で寝返りをうった。
 Tシャツと短パンから、健康そうな四肢が伸びている。
 足先に触れるのは、掛け布団代わりのタオルケット。寝ているうちに追いやってしまったようだ。
 救急車のサイレンが聞こえてきた。
 近づいてくるけたたましい音から逃れようと、康平は海老のように体を丸めた。
 サイレンが遠ざかっていく。
「クソーッ」
 眠気が薄れた康平は、見えない救急車に毒つきながら上半身をノロノロと起こした。
 体が鉛のように重い。
「寝足りん」
 いや、逆だ。眠りすぎて体が重い。カーテンをしているのに、照明がオフの部屋が明るい。
 頭が冴え始めると、康平は肌に貼りつく汗ばんだシャツに顔をしかめた。
 とりあえず、シャツを脱ぐ。
 脱いだシャツをフローリングに落とし、ベッドヘッドの目覚し時計を手に取った。
 午後一時過ぎ。
(もうこんな時間かよ)
 長々と息を吐き、康平は立ち上がった。
 床に転がる幾つもの空のペットボトルを無視し、ひとまず喉を潤そうと冷蔵庫に向かった。