「ほらどうぞ」
 戻ってきた康平が、マグカップを勇也に差しだした。
「サンキュッ」
 マグカップを受け取ると、勇也は何度も息を吹きかけてから啜った。
「ウマッ。やっぱ確実に腕を上げてるな」
「インスタントにウマイもマズイもあるかよ」
「あるに決まってんじゃん」
「そうですか。で、どうしたんだよお前」
 康平は一人分空けてソファに座った。
「えっ」
 勇也は目を大きく開いた。
「いつものことだけど……。いや、いつも以上に恥ずかしいことを言いだしたりしてさ」
 照れ臭いのか、康平はそっぽを向いた。
「色々あってさ。まさか電話が通じると思わなくて、ここにいるのも驚きで……」
 勇也は感慨深げにうつむいた。
「なんだよそれ。俺、お前みたいにケータイ忘れたりしないからさ。大概いつでも繋がるって」
 康平は少し困ったように笑った。
「どうしよう。今の『いつでも繋がるって』で、恋する乙女くらいキュンときた」
 勇也は片手を頬に当てると、態と体をくねらせた。