「なあ康平。もしかしたらお前、かなり腹減ってんじゃない?」
「食料なくて、朝昼兼用に食パン一枚食っただけだしな」
「そりゃ減るわ」
「いつもは結構これでもつんだけど、お前や朱美が来ると言い合いとかして体力勝負になるじゃん。だから急激に減るんだよ」
「お前が人並みに生きられるよう、一生懸命教えてきただけだ」
「度を越した世話焼きジジィとババァなだけだろ?」
 シレッとした康平に、勇也は頭を掻いた。
「世話焼きジジィ上等。ついでに恋愛の斡旋もしてやる。お前が人並みに生きるには、絶対人の手が必要だ。そんで、お前みたいなヤツのお守りを好き好んで四六時中してくれる人間なんて、一人しか思いつかない」
 勇也はコーヒーを飲み干すと、勢いよくカップをローテーブルに置いた。
 勇也は迫るように康平と向き合うと、その両肩をガッシリと掴んだ。
「お前には容姿という武器がある。運動もできる。勉強もやればできる」
 熱弁を始めた勇也に、康平はたじろいだ。
「どうした勇也。それ酒じゃないぞ。コーヒーだぞ」
「わかってる。けど、そんなことはどうでもいい。いいか? すっごく大切なことだから、心して聞け」
「ああ」
「お前、とっとと朱美ちゃんに告白して、高校卒業と同時に同棲しろ」
「はぁ~っ?」
 康平は素っ頓狂な声を上げて身を引いた。