どうしても忘れられない記憶がある。
気が付くと思い出して、僕の頭をいっぱいにする記憶。
それは、中学一年生の春のことだった。
小学校を無事卒業し、とりあえず中学校に進学した僕はある問題を抱えていた。
それは、友達がいなかったことだ。
僕は中学受験をし、それに受かったので自宅から遠い一星学園に通うことになった。
中学受験に受かったことにより、高校受験と大学受験をする必要はなくなったが、代償として入学したとき友達が一人もいなかった。
そんなわけで中学校に入学してしばらくの間、僕はずっと一人で過ごした。
その状況に当時の僕は焦りを感じていた。
元から社交的ではない僕だったが、友達がいないことで学校生活にどんな弊害が生じるかは把握できていたのだ。
たくさんの友達が欲しかったわけじゃない。
ただ、学校生活を共に歩んでいける友人が数人でいいから欲しかった。
だから入学して一か月後ほど経ってから開催された、クラス会に参加することにためらいはなかった。
そこで接点を作って、なんとか友達を作りたいという安考えである。
友達ができないのは、人と関わる機会がそもそもないからであって、場さえ整っていれば自分でも友達はできる、と考えたのだ。
しかし、そんな単純に話は進まなかった。
別に全部が全部悪いわけではなかった。
最初の内は問題などなかったのだ。
自分にとって、そこで起きたことは耐えがたい苦痛を伴っていただけで。
クラス会はカラオケで行われた。
参加人数は25人ほどで、クラス40人のうち15人ほどが来ていない計算になる。
僕たちは、3つのグループに分かれて各々のボックスに入っていった。
歌を歌い、談笑し、交流を深め合う。
自分が求めているコミュニティが確かにそこにはあった。
みんなで仲良く話しながら、これからの学校生活を共に頑張っていこうという空気がその場所にはあったのだ。
穏やかで、お互いを認め合える雰囲気。
個々人が、それぞれを尊重し合っている空間。
初めのうちは、素晴らしい交流の場になることに疑いはなかった。
その空気のまま終わっていれば完璧だったのに、と僕はいつも思ってしまう。
あるいは僕があの空気の時に帰っていれば、あんな暗い気持ちにはならなかったのだろう、と。