そして時は過ぎ―
月曜日、朝。
生徒会長選挙の日だった。
この数日間はひたすらに、考えても仕方のないことを考え続けた。
ぐるぐると回り続けた思考の中で、僕の気力はすっかり削がれてしまっていた。
体調もまったく優れなかった。
どれくらい優れなかったかと言うと、あの水曜日の後、体調を崩して木曜日と金曜日の学校に行かなかったほどだ。
そして今日は特に学校に行く気分ではなかった。
それはそうだ。
自分が負けた男の、勝利演説とも言えるスピーチを聞かなければいけないのだから、気など進むはずがなかった。
だが、木曜も金曜も休んでおいて今日も休むわけにはいかない。
重い足取りで家を出ようとした時、今起きてきたらしい母に呼び止められた。
「慈眼、最近何かあったの?随分と顔色が悪いようだけれど」
「……別に、何もないよ。ちょっと勉強のし過ぎがたたっただけさ」
「そう。落ち込んでいるみたいだったからてっきり、『気になる子にいいところを見せられなかった』とか『ライバルにテストで負けた』とかそんな悩みを抱えているのかと思っていたけど、そうじゃないのね」
「………」
言っていることが微妙に的はずれじゃないところで、母の勘が鋭いのがわかる。
なんだか否定するのもムキになったようで、返事できずに黙ってしまった。
そうしていると母は、
「もし自分のしたことに不安を感じたり、無力感に苛まれる時があったりしたら、この言葉を思い出しなさい。『どんなことにも意味はありうる』ってね」
と、そんなことを言った。