中学二年生の僕、夢宮慈眼(ゆめみやじげん)が所属している一星(ひとつぼし)学園は特殊な学校だった。
まずその人数が多い。
一星学園は、中等部、高等部、大学部にわかれており、その総勢は7千人を優に越す。
僕のいる中等部だけでも二千人近い人間が所属している。
当然それらを収容するべく、すさまじい大きさの施設が整っていることも特徴の一つとして挙げられる。
しかし、これらのことはまだ普通と言える範疇であろう。
僕が最もこの学園が特殊であると断定する点は、生徒会の在り方にある。

一星学園生徒会役員制度。
五月に実施される中間試験において、合計点数の最も高い生徒が生徒会長になる権利を与えられるのだ。
このようにして生徒会長が選ばれるのだが、他の役員はどのように選ばれるのかと言うと、それは生徒会長が指名するのである。
指名による生徒会役員の決定は賛否両論あるが、なにせ100年近く伝統として受け継がれてきた校風なのだから消してしまうわけにもいかない。

つまり一星学園において生徒会に入る方法は二つある。
一つ、五月の中間試験でトップの成績を取り、生徒会長になること。
二つ、生徒会長になりそうな人にごまをすって、役員に指名してもらうこと。
しかし、生徒会において会長以外の役員にはメリットはあまりない。
というより生徒会長にメリットが集中し過ぎていた。
それこそが、一星学園生徒会長特権である。

一星学園生徒会長特権。
それは、三年生の受験の推薦においても使用可能、はたまた高校、そして極めつけは就職の際の履歴書にも使えると言われ、その特権を使うだけでどんな試験もパスできる。
それさえあれば海外の学校や企業だって快く迎え入れてくれるという噂さえある。

そんな人生の勝ち組チケットともいえるような特権を手にするために、中間試験に全力で臨んでいる人はかなりの数いるのだった。
そういう僕も、今回の中間試験に向けて全力で勉強した一人だ。
だが、僕はそんな勝ち組チケットが欲しいわけではない。
全く別の目的のために、僕は二年生になってからの一か月を勉強に費やしてきたのである。

そんなわけで、一星学園中間試験当日。
物語はここから始まる。