部屋の電気がついた。私たちはドアを振り返った。開いた。ツトムがいた。
「てめえ! お前もグルだったのか! ぶち殺す!」
 おい、とツトムはねっとりとした視線で先輩を止めた。上野先生が何か言おうとした。ツトムは「業者にはすべて返しましたよ」と淡々と告げた。そして、私を押しのけて、伊折の前に立った。
「もうやめろよ、こんなことはもうやめろ」
 はあ? と伊折は食ってかかった。マグライトをツトムの眉間に突きつけた。私は心の中にあることを言った。
「ツトム先生、あなた、ここの資料についてた、年度のタグ、外してますよね。仕切り板とかも、全部。それで資料を混ぜてますよね。なんでそんなことしたんですか? 合理的な説明をしてください」
 彼は私の質問を無視した。外は西日で橙色に焼けていた。
「こんな馬鹿げたこと、お前にはもうやめてもらいたいんだよ。お前の兄貴の担任をして、お前の兄貴と話し合って、お前にはオカルトも、こんな『調査』もやめさせるって約束したんだ」
「嘘ついてんじゃねえぞ」
 本当だ、とツトムは言った。形の崩れたスーツのポケットから、スマホを取り出した。ぎこちない操作でタップした。少し間があった。
 伊折のスマホが鳴った。兄だ、とつぶやいた。通話ボタンを押した。