名前を思い出したくない元カレがいる。こいつはマジもんのクズで、私が必死こいて長距離走の練習をしているときに、放送部の後輩と、よりによって放送室で、普通にいちゃついていた。ブラまで外していちゃついていた。私はそれを見ている。花梨って意外と胸おっきいよね、と元カレが言う。
「駄目ですよ、先輩、彼女いるじゃないですか」
「え、文のこと? 別れるよ。だって、あいつ、ちょっと性格がヤバいんだも」
 そして私はフラれる。何で? と私が聞く。彼がヘラヘラしながら言う。文さ、一緒にいて楽しいタイプじゃないんだよ。文が何かやってるのを見るのが楽しいんだよな。
 なんだそれは? 私は珍獣か? 文、攻めすぎなんだよ。中二で原付に乗るって、ヤバいだろ。もうちょっとおとなしくしてくれよ。声がこだまする。
 これは夢だ、と私は気がつく。私は叫ぶ。起きるぞ馬鹿野郎!