前日はうまく眠れなかった。先輩にメッセージを送ると、すぐに返事が返ってきた。
『寝ろよ』
 私はなんだか笑ってしまった。伊折もきっと緊張しているんだろう。
 手順はこうだ。備品の搬入が始まるまではおとなしく作業をする。業者が来て、みんなが体育館から、借りているパイプ椅子や写真撮影用の機材を運び出したら(午後四時)、こっそり抜け出す。職員室に行く。ツトムの机から鍵を一本くすねる。別の(ぱっと見の形は同じ)鍵を代わりに置いておく。先輩と落ち合う。倉庫に入る。私は外で見張りをする。手稿が見つかり次第、それだけ抜き出す。倉庫を出る。鍵を元通りにする。戻ってくる。遠藤君、ありがとね。
 完璧。
 私は眠りに落ちた。