☆☆☆

「くそっ! 今日中に国に帰る予定だったのに」


アリムはそう愚痴り、小さな洞窟の中膝をついた。


今から1時間ほど前、ローズとアリムはほぼ同時に咳きこみ始め高熱を発祥した。


そのため、今は近くの洞窟で一旦休息することになった。


洞窟は狭く、ホワイトが入るスペースがないので今回は外で待っている。


「無理しないで。横になって」


熱で赤くなった頬のローズが、アリムに言う。


「俺達まで感染してどうすんだよ……」


そう、咳きも高熱も、アリムの妹と全く同じ症状だったのだ。


ずっと看病していたアリムだから、感染したのだとすぐにわかった。


「マスク、つけてたのにね……」


「国を出るときには、マスクだけで予防ができてたんだ……きっと、ウイルスが進化してる」


2人して横になり、悔しそうに歯軋りをする。


どんどん悪化していき、食べ物も飲み物の受け付けなくなり、やがて衰弱していく。


そんな妹の様子を思い出す。


熱にうかされ、徐々に意識が遠のいていく瞬間「今、助けに行くから」と、アリムは呟いた。