「ちょっと待って……一体どういうこと?」


「あの男には、お前への愛情が見受けられん」


キッパリそう切る魔女に、瞬きを繰り返すローズ。


つまり、アリムがちゃんとローズを愛せば何も問題はないのだ。


以外な発言に、ローズはしばらく放心状態になってしまう。


不意に、アリムの言葉を思い出す。


『魔女に愛されている』という、あの言葉を。


「おばあさま……あなたは、あたしを愛しているの?」


その質問に、魔女は答えない。


「ねぇ、あたしはただの実験台じゃなかったの?」


更に言葉を続けると、ザイアンは渋々口を開いた。


「ただの実験台なら、わざわざ王の姫をさらうものか」


「それって……」


「お前は、自分の生まれ落ちた境遇を受け入れられるか?」


ザイアンの言葉に、ローズはグッと喉の奥に言葉をつまらせた。


胸に苦いものがこみ上げてきて、幼少期の記憶が一瞬にしてよみがえる。


あれが王の娘だと、指を差さていたときのことを。


王は女好きだから娼婦にまで手を出して、そしてできた娘だと、笑われていたときのことを。