『んうぅ~っ、ふわっふわ、しゅわって口の中で溶ける! 名前の通り雪みたい……』

『なんたって雪溶けのスフレパンケーキだからね』

『うん、誠にも食べさせてあげたい』

『おいしいもの見つけるといつもそう言うよね、美紀』

指摘されたのが恥ずかしかったのか、美紀さんは『えへへ』と照れ笑いを浮かべて、テーブルに頬杖をつく。

『誠と出会って、嬉しいも悲しいもおいしいも、なんでも分け合いたいって思うようになったの。結婚って、こうやって自分の背負ってるものとか感覚とかを共有していくことなのかもって最近は思うんだ』

パンケーキを食べながら磯部さんへの想いを語る美紀さんに、胸が締めつけられる。

それは事故で引き裂かれたふたりの悲しみからではなく、どんな気持ちで磯部さんにパンケーキを食べてほしかったのかを知ったからだ。

温かい、愛の記憶に触れたからだ――。

目を閉じれば自然と溢れた涙が目尻を伝って流れ、もう一度瞼を持ち上げると私は見慣れた喫茶店の風景の中にいた。